4.華北で誕生した白磁と江南の名品「秘色青磁」

白磁の出現

強固な政治体制がしかれていた「唐」王朝では、華北で初唐に三彩陶が創始され、初唐からの邢州窯(けいしゅうよう - 河北省)の白磁は盛唐の時代に成熟しました。江南では中唐以降に越州窯(えっしゅうよう)青磁が復活し、また長沙窯(ちょうさよう)で新しい装飾技法による絵付磁器が開発されるなど、これまでにないほど陶磁器の生産は栄えました。

白磁は6世紀の北西時代に出現しました。

初期の白磁はうっすらと青みを帯び、青磁から白磁への過渡的なものでしたが、唐代の代表的な邢州窯の白磁には美しい釉が生成されました。白い素地(きじ)に不純物の少ない透明釉を掛けて作成され、また、高火度で焼く技術が開発されたことで、美しい白磁の製品がつくれるようになりました。

初唐から盛唐にかけての白磁は造形的にも技術的にも優れた名器や祭器が多く、四耳壺(しじこ)、円壺(えんこ)、万年壺(まんねんこ - 胴が丸々とした壺)、龍耳瓶(りゅうじへい)、鳳首瓶(ほうしゅへい)、長頸瓶(ちょうけいへい)や香炉の一種である博山炉(はくさんろ)などがつくられました。

中唐から晩唐期には主に優美で使いやすく、かつ堅牢な日常用器がつくられ、口縁が厚く丸くなっている玉縁に玉壁高台(蛇の目高台)の碗やラッパ状口縁に短いつぎ口を付けた水注、輪花碗・合子(ごうず)など、乳白色ないし黄白色に焼締まった製品が多く残されています。

これらは8世紀末頃から、越州窯青磁、長沙窯の絵付け磁器とともに、日本や東南アジアなどを中心に、広く海外に輸出されていました。



越州窯の秘色青磁

華北の白磁生産に対し、唐代後期の江南の地では、一時衰退していた越州窯青磁が再生し、晩唐から五代にかけてこれまで見られなかった完成度の高い青磁をつくりだしました。

新しい造形としては蟠龍瓶(ばんりゅうへい - うずくまった形の龍が肩に貼り付けられた瓶)、長頸瓶、蛇の目高台の碗、四足壺、五輪花皿などが知られています。

越州窯青磁の碗は、中唐の文人・陸羽(りくう)が喫茶法について著した「茶経(ちゃきょう)」に、茶碗にふさわしいものとして最高位に挙げられています。また、晩唐の詩人・徐いんは、なめらかに溶けた青緑色の美しい釉の調子を「秘色」と誉めたたえたことから、「秘色青磁」という通称で呼ばれることがありますが、残念なことに、伝来品には優品がありません。

晩唐から五代にかけて湖南省の長沙窯では、素地に顔料で絵付けしてから釉を掛ける下絵付の技法が開発されました。
この絵付け技法が施された磁器は、後世の陶磁発展の基となる画期的な発明であると称賛されています。



【白磁鳳首瓶(はくじほうしゅへい)】


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