14.ベトナム・タイの陶磁
ベトナムの陶磁
東南アジアの陶磁器では、ベトナムの施釉(せゆう)陶磁が先行し、作風も洗練されています。ベトナムは約1000年もの間、中国に支配されていました。やきものもその影響を受け、ベトナムの陶磁も漢(かん)時代以降の中国陶磁の移り変わりと並行しましたが、それらの器形や文様にベトナム独自の表現が加えられ、中国とは趣が違うやきものを作り出しました。
1~2世紀ころ、ベトナム北部では既に中国風の灰釉陶(かいゆうとう)がつくられていました。ベトナム初期の施釉陶は、中国漢代の副葬品とよく似ています。
6世紀には寺院や仏塔のタイル、施釉煉瓦(れんが)がさかんにつくられました。
9~11世紀には中国の越州窯青磁(えっしゅうようせいじ)や白磁(はくじ)、青白磁、黒褐釉磁などが多数輸入され、これらにならった製品がつくられました。
13世紀になると黄釉褐彩磁、鉄絵磁といった独自の作風を生み出し、14世紀後半には青花(せいか - 染付磁器)が始まった。最初は元の青花を模倣しましたが、後に素朴な味わいのある独特な青花を生み出し、15世紀には五彩(安南赤絵(あんなんあかえ))も開発されました。
ベトナムの陶磁製作は急激に発展し、青花も皿・鉢・壷・瓶(へい)・水注(すいちゅう)・合子(ごうす)など様々な用途のものが生み出されました。五彩の文様は中国のものを基本にして手を加え、草花、鳥獣、人物などの豊富な題材で、当時のベトナム人に好まれた独特の写実的文様が描かれています。
以後16世紀にかけて発展し、盛期を迎え、タイのスワンカローク青磁などとともに中近東や近隣諸国に輸出されました。17世紀、中国の遷界令の撤廃で輸出は終わりを告げるが、寺院用の大花瓶・香炉や日常用品の生産は続けられた。
タイの陶磁
タイの陶磁で有名なのは、宋胡録(すんころく ※1)などの「スワンカローク窯」や「スコタイ窯」で焼かれた製品です。
14世紀から16世紀ごろに青磁釉・白濁釉・褐釉・鉄絵・鉄彩などで、日常用品だけではなく、仏像・仏塔や欄干(らんかん)・屋根飾りなどの建築装飾用品も焼かれました。日常用としては皿・鉢・盤・瓶・壷・合子など、多様な製品がつくられましたが、鉄絵文様の器には中国陶磁の影響がうかがえます。
エジプトのカイロのフスタート遺跡からは、14~15世紀のスワンカローク窯の青花や青磁が出土しており、タイのやきものは大量に海外に輸出されていたことが分かります。日本にも渡来し、特に鉄絵の小さな蓋物は茶人が香合に見立てて珍重していました。
※1)宋胡録(すんころく)
スワンカロークの転:タイ、特に中北部のスワンカローク産の古陶磁器の総称。
五彩水牛文盤(16世紀 ベトナム)
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